早朝の富良野線と根室本線の山越え区間を行く―2018年02月 北海道一周の旅Ⅱ・Part2

2日目・前編(2018/2/27)

(「夕暮れ迫る留萌本線の旅―2018年02月 北海道一周の旅Ⅱ・Part1」の続き)

旅行2日目の行程:
5:15 旭川駅(いまここ!)→ 5:40 富良野線 → 7:10 富良野駅 → 7:20 根室本線 → 9:20 新得駅 → 10:45 根室本線 → 16:10 釧路(泊)

※この旅行記は2019/5/19公開の旧版旅行記を基に再編集したものです。

早朝の富良野線の旅

旭川駅

早朝5時15分、私はまだ真っ暗な旭川駅にやってきました。

この日の朝の最低気温は-16度。十分な防寒対策を施した上でホテルを出ましたが、それでも顔を刺すような冷たさでした。

今日の旅は道北の玄関口・旭川から道東の街・釧路まで約300kmの道のりを普通列車で丸一日かけて移動します。

まずここ旭川から乗るのは富良野線です。

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富良野線は、旭川駅とラベンダーで有名な街・富良野市の富良野駅を結ぶ全長54.8kmの路線です。

富良野線には5年前の北海道一周の旅でも乗車しています。そのときはちょうど爆弾低気圧が直撃している最中で、途中の美瑛駅では地吹雪に遭遇しました(そのときの旅行記はこちら)。

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この日から使い始める北海道フリーパス(簡単に言えばJR北海道の列車が7日間乗り放題のパス)で旭川駅構内に入った私は、1・2番線ホームへと向かいました。

富良野行き普通列車が発車する1番線には、既に3両編成の列車が停まっていました。

しかし扉が開いているのは富良野側の1両のみで、残りの後方2両は扉が閉じたままでした。

扉の開いている先頭車両に乗り込んで待つこと約10分、列車は早朝5時39分に定刻通り旭川駅を出発しました。

富良野線(旭川~美瑛)

旭川駅を出発してしばらくすると空は徐々に明るくなり始めました。午前6時ごろになると遠くの空が赤く染まるようになっていました。

美瑛駅

午前6時18分、列車は途中駅の美瑛に到着しました。

ここ美瑛では締切のまま連結していた後方2両の列車を切り離す作業を行うため、5分間停車するとのことでしたので列車の外に出てみました。
(ちなみに切り離した後方2両は6時54分発の美瑛始発・旭川行きの列車でした)

美瑛駅に降り立つのは5年ぶり。ホームやおしゃれな装飾が施された駅舎の様子は5年前とはあまり変わってないようでした。

5年前の旅ではここ美瑛の地で地吹雪に遭遇しました。しかし今回は薄暗いものの上空は晴れ渡っていました。

富良野線(美瑛~富良野)

午前6時23分、列車は美瑛駅を出発しました。

進行方向右手の車窓からは、雪化粧した山々が遠くに見えてきました。

そして午前6時40分頃、列車内に朝日が差し込んできました。進行左側に広がる山々の隙間から太陽が顔を出したのでした。

列車は一面に広がる銀世界の中を南へと進んでいきます。終点の富良野に近づくにつれて遠くの山々が近づてきました。

5年前に乗車したときには、この辺りは吹雪で十数メートル先までしか見えない状態でした。

しかし今回は澄み渡った青空が広がっていました。そしてこんなにきれいな山々の姿を見ることができる路線であることを今回初めて知りました。

旭川駅を発車してから約1時間半後の午前7時8分、列車は終点の富良野に到着しました。

根室本線の旅①~山越え区間・かつての日本三大車窓を見る~

富良野駅

朝日差し込む富良野駅のホームでは、幻想的な光景が随所で見られました。

5年前に訪れた際には強風が吹き付ける中、寒さに耐えながら列車を待っていました。しかし今回は寒いながらも穏やかな朝を迎えていました。

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富良野駅は富良野線の終着駅であるとともに、根室本線も乗り入れている主要駅の一つです。5年前の旅ではここから根室本線の始発駅・滝川駅へと向かいましたが、今回は反対方向の帯広・釧路方面へと向かいます。

根室本線は北海道道央の街・滝川市の滝川駅から北海道本島の最東端の街・根室までを帯広・釧路経由で結ぶ全長443.8kmの長大路線です。

今回の旅では、5年前の旅で乗車していない富良野~根室の区間389.2kmを普通列車で2日かけて乗り通しました。

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今度の釧路方面の列車は3番線ホームから発車する富良野駅7時20分発の普通・東鹿越行きの列車。

待つこと数分、午前7時16分に列車は富良野駅へと入線してきました。そして午前7時20分、列車は定刻通り富良野駅を出発しました。

ここから長い長い根室本線の旅が始まります。

根室本線の旅(富良野~東鹿越)

根室本線は大きく3つに分けることができ、このうち新得~釧路の区間は札幌からの特急列車も走る主要区間の一つとなっています。

一方、残る滝川~新得と釧路~根室の区間は共にローカル線と化しています。その中でもこの先の富良野~新得の区間は難所・狩勝峠を超える山越えの区間で、最も乗客数の少ない区間となっていました。

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富良野駅を出発した列車の車窓からは引き続き山々が見えていました。しかしその姿は富良野線のときよりも大きくなり、山越えが近づいているのを感じさせました。

そんな景色を見ながら乗ること45分、列車は終点の東鹿越駅に到着しました。

東鹿越駅

東鹿越駅は山が間近に迫る小さな駅でした。

この東鹿越駅で列車を降りた乗客たちは、駅前に停まっている観光バスのような大型バスへと向かって歩き次々と乗り込みます。

ここから先の東鹿越~新得の区間は2016年夏の台風被害により運休が続いている区間(2021年当時)。台風被害から約4年半が経過した2021年2月現在においても復旧の話は出ておらず、このまま廃線になるとさえ噂されています。

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東鹿越駅前に停まっていた大型バスは、運休中の東鹿越~新得の区間を走る列車代行バス。ちょうど通学の時間帯ということもあり、バスの車内には大勢の学生が乗っていました。

新得行きの列車代行バスは午前8時9分に定刻通り東鹿越駅を発車しました。

根室本線・列車代行バスの旅(東鹿越~新得)

地図によるとバスは線路沿いの道路を進んでいるようでしたが、線路の姿そのものはときどきしか見えませんでした。

途中、根室本線の踏切を渡る場所もありましたが、その線路は完全に雪で覆われその影すら見ることができませんでした。

富良野駅を出発してから約8分、バスは次の駅である幾寅駅に到着しました。

幾寅駅は、1999年に公開された故・高倉健主演の映画「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台となった駅。映画の中に出てくる廃線になりかけているローカル線「幌舞線」の終着駅「幌舞駅」として撮影されたそうで、映画公開から20年近くたった現在もロケ当時のまま残されています。

幾寅駅を出発したバスは、程なくして高校前バス停に停車しました。ここは南富良野高校の最寄りのバス停で、根室本線の駅ではないですが停留場の一つになっていました。

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このバス停で学生が全員下車すると、バスの車内に残ったのは防寒着を着たいかにも鉄道ファンの雰囲気漂う3名の乗客だけでした(私も含む)。

線路沿いの道路を進むこと約10分、バスは次の駅である落合駅に到着しました。落合駅は跨線橋のある少し大きめの駅ですが、そのホーム上には当然ながら誰もいませんでした。

そして落合駅を出発したバスは線路沿いから離れ、国道38号を走って狩勝峠を上っていきます。

狩勝峠越え~かつての日本三大車窓を見る~

やがて幾つめかのトンネルを抜けると、進行方向右手の車窓が開けました。

そこに映るのは眼下に広がる十勝平野の絶景でした。

(下の写真は一番の絶景ポイントから少し先で撮影した上、運悪く電柱もかぶってしまったため、絶景写真とはいきませんでした)

眼下には幾重にも連なる山々と雪に覆われた十勝平野が広がっていました。見えたのはごく短い時間でしたが、とてつもない絶景でした。

そしてこの辺りはかつての日本三大車窓の一つであった根室本線の狩勝峠越え(旧線ルート)の近く。旧線ルートは1966年の新線ルート開業に伴い廃止されたため、狩勝峠越えの絶景を列車から拝むことはできなくなりました。

しかし今バスが走る国道38号はかつての旧線ルートの近くを走行しています。つまりここからの車窓はかつての日本三大車窓とほぼ同じ車窓が見えているのです。

これが今は亡き日本三大車窓の絶景。列車代行バスの方が実は当たりだったかもしれないと思うほどの絶景でした。

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絶景ポイントの辺りから道は下り坂となり徐々に高度を落としていきます。

やがてバスは平地へと下り、車窓に根室本線の線路が見えてくると長らく続いたバスの旅も終わりが近づいてきました。

そして東鹿越を出発してから約70分後の午前9時18分、列車代行バスは定刻より1分早く終着駅に到着しました。

 


根室本線の旅はこの後も続きますが、今回の記事はここまでとなります。

次回は新得駅から普通列車を乗り継いで釧路までの172.1kmの区間を約5時間かけて移動していきますが、続きは次回の記事で書きたいと思います。

 

続きは「普通列車で行く根室本線 横断の旅―2018年02月 北海道一周の旅Ⅱ・Part3」へ

「2018年02月 北海道一周の旅Ⅱ」のその他の記事はこちら、その他の旅行記はこちら

 

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