吹雪吹く富良野線の旅―2013年 北海道一周の旅・Part4

5日目 (2013/3/2)

(「北海道横断 & 網走・流氷観光―2013年 北海道一周の旅・Part3」の続き)

旅行5日目の行程:
6:20 網走駅(いまここ!) →(石北本線) 10:10 旭川駅 →(富良野線) 13:00 富良野駅 → (根室本線) 14:30 滝川駅 → 15:00 岩見沢駅 →(室蘭本線) 16:40 苫小牧駅 

※この旅行記は2018/12/1公開の旧版旅行記を基に再編集したものです。

石北本線で西へ

網走からの脱出

この日の朝、私は6時23分発の特急「オホーツク2号」札幌行きの車内にいました。

当初の予定では、午前9時台に出発する特急「オホーツク4号」に乗るつもりだった私。ところが朝、目を覚ましてみると時刻は午前5時40分。前々日も4時間半しか寝ていなかったのでとても眠たかったですが、もう一度寝付こうとしてもなかなか寝付くことができませんでした。

そんな中ふと思い立ったのです―今から準備すれば特急「オホーツク2号」に乗れるかもと。

私は起き上がり急いでホテルを出る支度をしました。そしてホテルをチェックアウトしてダッシュで網走駅に向かいました。

ホテルが駅の目の前ということもあり、何とか間に合った私は駅員に周遊きっぷを見せて改札内に入りました。

改札に面する1番線には既に特急「オホーツク2号」が停車していました。発車時間ぎりぎりだったので自由席が空いているか不安ではありました。しかし早朝ということもあり思ったほど乗客は乗っておらず、無事に窓側の席を確保することができました。

嵐の前の静けさ

定刻通りに網走駅を発車した特急「オホーツク2号」は、しばらくすると網走湖畔を走るようになります。車窓に時折映る網走湖からは湯気が立ち上り、周辺は霧に包まれたような幻想的な光景が見られました。

列車はやがて途中駅である遠軽駅に到着しました。列車はこの駅でスイッチバックを行います。

遠軽駅を発車すると、車窓からは雪化粧した山々が見えました。空は雲一つない快晴で、これから爆弾低気圧が来るとは思えない天候でした。

まさしく「嵐の前の静けさ」―そんな穏やかで綺麗な朝だったことを今でも覚えています。

旭川駅

網走駅を出発してから約3時間50分後の10時10分、列車は定刻通り旭川駅に到着しました。当初の予定ではこのまま乗り続ける予定でしたが、予定より3時間も早い列車に乗ったため、計画を変更してここ旭川駅で途中下車しました。

旭川駅の駅舎は2011年に開業したばかりの4代目駅舎でした。駅舎内は木をふんだんに使用しており、温かみのあるデザインになっていました。

計画を変更して旭川駅で途中下車した私は、ここ旭川から南へと延びる富良野線に乗車することにしました。

吹雪吹く富良野線の旅

富良野線(旭川~美瑛)

1番線に向かうと既に1両編成の列車(10時31分発の普通・美瑛行き)がすでに停車していました。この列車に乗り込んだ私は嵐が迫りくる中、富良野線を南へと向かいました。

富良野線は旭川駅とラベンダーで有名な富良野駅を結ぶ路線で、夏になると車窓から田園風景やラベンダー畑を望める風光明媚な路線です。

しかし今は冬の北海道、車窓には雪に覆われた北の大地が延々と広がっていました。

さて天候はというと、朝に遠軽駅を出発したころは快晴だった空も、旭川駅に着く頃には曇り空に変わり雪が降り始めていました。

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雪が降る中、列車は美瑛駅に到着しました。

ここから富良野へと向かう列車はちょうど1時間待ちとなることから、美瑛駅の周辺を散策することとしました。

しかし半ば気まぐれで訪れたこの地で、私は冬の北海道の脅威を垣間見ることになってしまうのです。

美瑛駅

美瑛は富良野同様ラベンダーで有名な町です。しかし今は冬であるためラベンダーは咲いておらず、一面雪で覆われていました。

駅舎の外壁は白タイルで覆われたおしゃれな作りで、乗り場案内の看板もおしゃれに飾られていました。

美瑛駅のホームで写真を撮っていた私は、駅の北側に跨線橋があるのを見つけました。この跨線橋に登れば美瑛駅を上から眺めることができる―そう考えた私は跨線橋へと向かいました。

この跨線橋は「丘の町フリーロード」といい、駅舎がある美瑛駅東口と線路を挟んで反対側の西側をつなぐ公営の跨線橋です。

 

跨線橋の中は広々としており比較的きれいめでした。

しかし外が曇っているのに照明が付いていないため少し薄暗く、加えて外からの音は遮断され非常に静かでした。そして、そんな跨線橋の中にいるのは私ただ一人だけ。そのため跨線橋の中は不気味で少し怖いなと感じていました。

——–

跨線橋を渡り切ると、反対側の出口には小さなバスロータリーが広がっていました。私はロータリーを軽く一周し跨線橋の入り口に戻ってきました。

その直後でした。突然風が強く吹き、地吹雪が発生しました。私は慌てて跨線橋の中に逃げ込み出入口の扉を閉めました。

扉越しに外を見ると、先ほどまで散策していたロータリーはかすんでおり、横殴りの雪が吹き付けていました。

跨線橋の中では風切音と扉がガタガタ揺れる音が響いていました。初めて見た地吹雪と誰もいない不気味な跨線橋。本当に怖くなった私は人のいる美瑛駅まで戻ることにしました。

———

跨線橋を急いで渡り駅舎側に戻ってみると、地吹雪は収まっているようでした。そこで約70 m先の駅舎へと向かうために跨線橋の外に出ました。

その直後でした。再び強い風が吹き、地吹雪が発生したのです。

今度は跨線橋から少し離れてしまったため、中に戻ることができなかった私。

冷たい強風と巻き上げられた雪が容赦なく私を襲います。私はその場から動くことができず、寒さと体にたたきつける雪の痛みにただ耐えることしかできませんでした。

暴風雪に耐えること30秒くらい、風が収まったので私は駆け足で駅舎の中に滑り込みました。

駅舎に駆け込んだ私は、待合スペースのベンチに座り込みました。座り込んだ私は、初めて体験した地吹雪の恐怖からしばらく動くことができませんでした。

———

しばらく休むと気持ちは大分落ち着きました。

しかし、もし駅から遠くに離れた場所に向かっていたら駅に戻ってこれなかったかもしれない―そう考えると駅周辺の散策をしようという気になれませんでした。

そのため駅舎に戻ってからの約40分間はずっと駅舎内に留まっていました。

富良野線(美瑛~富良野)

約40分経った12時08分、普通・富良野行きの列車は大雪が降る中、定刻通りに美瑛駅を発車しました。

私は車両先頭の窓から外を見ていましたが、富良野へと向かう間もときどき吹雪く場面がありました。こんな大雪の中でも動く列車はすごいなと感心しました。

富良野駅へは定刻より6分遅れの12時46分に到着しました。私はここから根室本線に乗り換え北へと向かうことにしました。

富良野駅

ローカル路線を乗り継ぎ苫小牧へ

根室本線(富良野~滝川)

駅構内や駅前を散策した後にホームで待つこと約10分。強風でホームの屋根や地面から雪が舞う中、根室本線を北に向かう普通・滝川行きが入線してきました。私はこの列車に乗り込み終点の滝川駅へと向かいました。

特急「スーパーカムイ」で岩見沢へ

滝川駅は札幌と旭川を結ぶ函館本線に接続しています。ここから私は特急列車で岩見沢駅へと向かいました。

特急に乗ること約25分、列車は定刻通り岩見沢駅に到着しました。岩見沢からは室蘭本線に乗り換え、今日の最終目的地・苫小牧を目指します。

室蘭本線(岩見沢~苫小牧)

室蘭本線は、長万部~苫小牧~岩見沢を結ぶ長大路線の一つですが、末端の苫小牧~岩見沢間は普通列車しか走らないローカル線と化しています。

私は岩見沢駅に入線してきた1両編成の普通・苫小牧行きに乗り、南へと向かいます。列車は延々と森の中を駆け抜けている印象で、車窓には左右とも木々が迫っていました。

そんなローカル線に揺られること約1時間20分、列車は終点の苫小牧に到着しました。

苫小牧駅

苫小牧駅は工業都市として有名な苫小牧市の代表駅であると共に、室蘭本線、千歳線、日高本線の3路線が乗り入れる主要駅の一つです。

改札を抜けて駅を後にした私は、時おり吹雪く天候の中、この日宿泊する駅近くの宿へと向かいました。

 


今回の旅行記はここまでとなります。美瑛駅で遭った地吹雪は私の記憶に深く刻まれた体験となりました。

翌日は苫小牧から南へと延びる日高本線に乗車し、終点・様似まで向かいますが、続きは次回の記事で書きたいと思います。

 

続きは「在りし日の日高本線 146.5kmの旅―2013年 北海道一周の旅・Part5」へ

「2013年02月 北海道一周の旅」のその他の記事はこちら、その他の旅行記はこちら

 

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