寝台特急「北斗星」で行く晩冬の北海道―2013年 北海道一周の旅・Part1

1日目・2日目 前編(2013/2/26~2/27)

旅行1・2日目の行程:
18:30 上野駅(いまここ!) → 19:00 寝台特急「北斗星」 → 11:00 札幌駅 → 15:00 日本一の秘境駅・小幌駅 → 18:30 札幌駅(泊)

※この旅行記は2018/10/21公開の旧版旅行記と2018/11/4公開の旧版旅行記を基に再編集したものです。

寝台特急「北斗星」で行く晩冬の北海道

上野駅~旅の始まり~

2013年2月26日。私は長年の悲願だった北海道一周の旅に出るために、上野駅の13番線ホームである列車の入線を待っていました。

その名は寝台特急「北斗星」。かつて上野駅と札幌駅の間を結んでいた寝台列車で、後に「最後のブルートレイン」として鉄道ファンの記憶に刻まれた名列車です。

時刻は18時30分頃。寝台特急「北斗星」札幌行きの発車時刻は19時03分でしたが、ホームには発車30分前であるにも関わらず「北斗星」の入線を待つ多くの乗客がいました。

そして発車20分前を切った18時45分、ついに寝台特急「北斗星」が上野駅に入線してきました。列車は最後尾の客車から後ろ向きにゆっくりと入線していきます。

客車が全て入線し終えると、最後にけたたましい音と共に客車を牽引する機関車が見えてきました。そして機関車がホームに収まると列車はゆっくりと停車しました。

 

私が乗車したのは、6号車のB寝台ソロの一室。「北斗星」には一般の列車のような座席はなく、代わりに5種類のベッド付きの空間・部屋が用意されていました。今回乗車したB寝台ソロは最も簡素な1人用の部屋でした。

6号車後方の乗降口より車内に入って左手に進むと、自動扉に突き当たります。その自動扉が開くと、その先には人とすれ違うのがやっとくらいの狭さの通路があり、その右手には個室の扉がずらっと並んでいました。

きっぷに記載された部屋番号の前まで向かい扉を開けると、目の前には段差の高い3段の階段がありました。後で知りましたが、「北斗星」B寝台ソロには1階部屋と2階部屋があるようで、今回私が来たのは2階部屋でした。

階段を上りきると、左手にベッドがありました。室内は床から天井までの高さが低くまっすぐに立つことができなかったので、私は早速ベッドに腰を下ろしました。

ベッドには浴衣、枕、ハンガー、掛布団が置かれていました。ベッドの窓側には上げ下げ可能な肘掛も付いており、ベッドの上にはハンガーを吊るす箇所が一カ所ありました。

通路の窓側には固定されたミニテーブルがあり、その下にはゴミ箱が置かれていました。

扉の上部には荷物を収納するスペースがありました。

最も簡素な個室ということもあり部屋は狭めでしたが、人一人が一泊するには十分な広さでした。

「北斗星」出発~闇夜の東北本線を行く~

19時03分、列車は定刻通り上野駅を出発しました。室内にいたため、発車ベルはかすかに聞こえたものの、ドアが閉まる音は全く聞こえませんでした。そのため動き出すタイミングを予測できず、動き出したときには一瞬ガクッとなりました。

部屋の鍵の受け渡しは車掌がきっぷを確認する際に行うとのことだったので、それまでは室内に留まることにしました。

次の停車駅・大宮までは、車窓からビルや街の灯りなどが見えていました。しかし大宮駅を出発してしばらくするとビルなどの明かりは見られなくなり、暗闇の度合いが増しました。車窓からは街灯の明かりがポツンポツンと見えるだけとなりました。

そんな中、私は車掌が部屋の鍵を持ってくるのを待ちました。ところが待てど暮らせど車掌は来ません。結局、車掌がやってきたのは出発から2時間弱が経った21時前。結構待たされたなと内心思いつつも、鍵が来てようやく外に出れるようになったので、上野駅出発後初めて部屋の外に出ました。

しかし初めての寝台列車ということもあり緊張していた私は、お手洗いに行っただけで車内散策もせずに自分の部屋に戻ってしまいました。

部屋に戻った私は上野駅で買ってきた駅弁を部屋で食べました。そして真っ暗で外の景色が何も見えなかったのと、特に室内でやることもなかったため、眠くなった21時半頃に横になりました。

「北斗星」の長い夜

横になった私でしたが、ここで一つ問題が発生しました。とりあえず部屋の電気は消したものの、読書灯のスイッチを見つけることができず消すことができなかったのです。

やむなくそのままベッドに横になったものの、頭上に明るい光があるためなかなか寝付くことができませんでした。

列車は21時50分過ぎに郡山駅に到着しました。

しかしその後も寝付くことはできませんでした。読書灯を消すことができなかったことに加え、枕が高く硬かったのと、機関車が加減速する際の振動がベッドに伝わり体が左右に揺さぶられたためでした。

そんな状態の中、車内にはいつしか最終の車内放送のお知らせが流れました。車内には線路の継ぎ目でカタンコトンという音、機関車が加減速する際に客車同士の連結部がガタンという音、通過する踏切のカンカン音、そして駅のポイントを通過するときの車輪のキーキー音しか聞こえませんでした。

その後も私は長い時間寝付けずにいました。ふと携帯電話の画面を見るといつしか時刻は午前0時を回っていました。

私はなかなか眠れないことに少しいらだってきたため、読書灯を消せないものかと半ばやけくそになってベッドまわりを探してみました。するとついに読書灯のスイッチを発見し、ようやく消灯することができました。

しかしそれでも寝付くことはできませんでした。特に加減速時の振動は、眠りに落ちそうな状態を邪魔する感じで、そのたびに目を覚ましてしまいました。

そしてどれくらいの時間が経ったのだろうか、もしかしたら一回眠ったかもしれませんが、列車が停車したのでふと外を見ると、盛岡駅に停泊中でした。それからしばらくして携帯の画面を見ると、なんと時刻は午前3時半を過ぎていました。

それからしばらく後(おそらく午前4時頃)、私はようやく眠りにつくことができました。こうして寝台特急「北斗星」で過ごした長い”初夜”は終わりを告げたのでした。

北海道上陸~「北斗星」で迎える朝~

午前4時頃に眠りについた私でしたが、朝最初の車内放送で目が覚めてしまいました。時刻は早朝6時15分頃。眠りについてからわずか約2時間後のことです。

車内放送によると、寝台特急「北斗星」はすでに本州と北海道を結ぶ青函トンネルを抜け、北海道に上陸したとのことでした。

さて、この時点で2時間強しか寝れていなかったため、当然のことながらもう一度眠ろうとしました。しかし横になってもなかなか眠ることはできませんでした。

そうこうしているうちに間もなく函館駅に到着するというアナウンスが流れました。そこで私はいっそのこと起きることにしました。

まだ眠たい中、函館駅停車中に洗面所に向かいました。暖房の効いていないデッキを通った際には空気がとても冷たく寒いと感じました。この冷たさを感じたとき、私はついに冬の北海道に上陸したのだと実感しました。

北の銀世界を行く「北斗星」

函館駅を出発した「北斗星」は札幌を目指して函館本線を北上していきます。車窓には冬の北海道らしく、雪一面の銀世界が広がっていました。

列車は特に大きなトラブルに見舞われることなく、札幌駅へと向かい走り続けます。

一方、2時間強しか寝ていない私の体調はというと、睡眠不足からくる眠気に加え、37.5℃の熱があることが発覚しました。実はこの旅行を始める前日まで体調を崩しており、出発当日の朝にようやく熱が下がったばかりだったのです。

そんな調子であったため、今後の影響も考え一度横になることにしました。しかし結局寝付くことはできず、東室蘭を発車した後に再び起き上がり、眠気と熱からくるしんどさの中、外の景色をぼんやりと眺めていました。

札幌駅~旅の終わり~

苫小牧を出発して千歳線に入ると、「北斗星」の旅も終わりが近づいてきてきました。

最後の停車駅である南千歳を出発すると、車掌がやってきて鍵の回収が行われました。

そして定刻より約4分遅れの午前11時19分、列車はゆっくりと札幌駅の3番線ホームに入線し停車しました。こうして約10時間に及ぶ人生初の「北斗星」の旅は終わりを迎えたのです。

私はしばらく写真を撮影した後、またいつか乗車する日を夢見ながら札幌駅のホームを後にしました。

しかしこのときには思いもしませんでした。わずか2年半後に「北斗星」が廃止されてしまうことを。そして結果的に今回が最初で最後の「北斗星」乗車になってしまいました。

当時を振り返って思うこと

さて寝台特急「北斗星」に詳しい方なら、「このブログの著者は食堂車に一度も行かなかったのか。もったいないな。」と思ったことでしょう。

私自身、このときの「北斗星」の旅では、緊張や自らの浅学、体調不良が重なったため、食堂車に一度も行かなかったり、車内を散策しなかったりと、後年振り返ると十分に「北斗星」を満喫できなかったと感じています。

特に、食堂車に一度も行かなかったのは「北斗星」に乗車した者としてはもったいないなかったと思います。実は当時の私は「北斗星」の食堂車で提供されるのは高額のコース料理(7,800円・要予約)だけだと思っていました。しかし実際には、予約なしで食べられる夕食の時間(パブタイム、ビーフシチュー:2,500円、クリームパスタ:1,200円など)や、1,600円で食べられるモーニングタイムが存在したことを後で知りました。

そのため今度こそ万全な体調で「北斗星」に乗り、食堂車で夕食や朝食を食し、「北斗星」を満喫したいと思っていました。

しかし、私が寝台特急「北斗星」に乗車したのはこのときが最初で最後となってしまいました。何故なら2015年8月、寝台特急「北斗星」は廃止となったためです。

しかしながらいまこうして約7年半前の「北斗星」の旅を振り返ると、十分に満喫できなかったとはいえ、「北斗星」に乗車し、個室で半日弱を過ごすことができただけでも本当に良かったと個人的には思っています。

 


今回の記事はここまでとなります。

この後は長年の悲願だった日本一の秘境駅「小幌駅」を初訪問しましたが、続きは次回の記事に書きたいと思います。

 

続きは「日本一の秘境駅・小幌へ―2013年 北海道一周の旅・Part2」へ

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