2018年 東北縦断の旅・Part 5ー東北”横断”の旅~万緑のローカル線をゆく~

3日目(前編)(2018年8月18日)
~東北”横断”の旅―万緑のローカル線をゆく―~

(この記事は2019/6/22付で内容等の大幅な修正を加えました)

(「2018年 東北縦断の旅・Part4ー三陸海岸縦断の旅(後編)~被災地・陸前高田の衝撃~」の続き)

釜石線の旅

釜石駅

早朝6時半過ぎ、私は青空広がる釜石駅に来ていました。

昨日まで東北地方の太平洋沿岸の路線を縦断しながら被災地の様子を垣間見てきましたが、ここからは鉄道メインの旅となります。本日の前半は、東北地方を横断する2つのローカル線、釜石線と北上線を乗り継ぎ、秋田県の内陸部へと向かう東北”横断”の旅を敢行します。

JR釜石駅の構内に入り地下の連絡通路を通り3・4番線ホームに向かうと、そこにはすでに釜石線の普通・花巻行きの列車が停車していました。

ここから乗るJR釜石線は、岩手県内陸部の都市・花巻市の花巻駅と沿岸の都市・釜石市の釜石駅を東西に結ぶ全長90.2kmの路線です。釜石線の前身の岩手軽便鉄道が、「雨ニモマケズ」で有名な宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」のモデルとなったことから「銀河ドリームライン釜石線」の愛称がついています。そんな釜石線には蒸気機関車「SL銀河」が不定期で走っており、こちらを目当てに訪れる鉄道ファンや親子連れなども多くいます。しかし今回は普通列車で釜石線の全線走破を行います。

釜石駅の3・4番線ホームからは昨日乗車した三陸鉄道・南リアス線の列車が見えました。その姿を背に私は普通・花巻行きの列車に乗り込みました。

釜石線の旅

午前6時55分、列車は定刻通り釜石駅を出発して西へと向かいました。

釜石線は市内を流れる甲子川沿いに作られた渓谷沿いに走っていきます。そのため進行方向左側の車窓からは、緑で覆われた山々とその手前の狭いスペースに作られた住宅や田畑が見受けられました。

釜石駅から3駅隣の洞泉駅を出発した列車は、釜石線の名物「Ωループ」へと差し掛かります。「Ωループ」は釜石線最大の難所「仙人峠」を超えるために作られたもので、その名の通り線路がΩの形をしたループ状になっています。西向きに走る花巻行きの列車は、一度進路を北へと変えて約3km進みます。そして標高を上げながら180度カーブして進路を真反対の南向きに変えます。最後に南へ約3km進んだ後、進路を再び西向きに戻すという経路をとることで線路が急勾配になることを防いでいます(実際の線路の形を見たい方はGoogle mapなどで「陸中大橋駅」と検索すれば見ることができます)。

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洞泉駅を出発した列車はしばらくすると右へとカーブし北へと進路を変えました。左側の車窓には、これからトンネルで中を突き抜けることになる仙人峠の姿が迫ってきていました。

それから間もなく、車窓には赤い鉄橋が見えてきました(下の写真の2枚目)。この鉄橋はこの後ループした後に通ることになる釜石線の鉄橋となります。

列車はループの手前にある陸中大橋駅に停車した後、トンネルに入りループを開始しました。そしてトンネルを抜けると左側の眼下には先ほど通ったばかりの釜石線の線路が一瞬ですが見えました(写真は撮りそびれました…)。

陸中大橋駅からしばらくは本格的な山越えとなり、車窓からはトンネルの壁かと木々の姿しか見えませんでした。そして3駅隣の平倉駅の辺りからは車窓には緑で覆われた田園風景が見られるようになると、難所・仙人峠の山越えは終わったようでした。

平倉駅を出てしばらくすると徐々に雲が低くなり、やがて周囲は徐々に霧に覆われていきました。田畑からも湯気が立ち上る幻想的な光景の中、列車は西へと進みました。

やがて霧や雲はなくなり、車窓には再び夏の青い空と緑で覆われた田園風景が広がっていました。そんな景色が延々と広がる中、列車は西へと進んでいきました。

釜石駅を出てから約1時間50分、列車は東北新幹線の停車駅である新花巻駅に近づいていました。やがて田園風景の奥に新幹線の高架と駅が見えてくると、列車は新幹線と交差する形で新花巻駅に停車しました。

田園地帯の真ん中にできた東北新幹線の駅を見てよくこんなところに作ったものだなと思いました。そんな中、乗客の大半はこの新花巻駅で下車しました。そして残ったわずかな乗客を乗せて再び西へと向けて走り出します。

午前8時54分、新花巻駅から2駅隣の終点・花巻駅に到着しました。釜石駅を出発してから約2時間の旅でした。

花巻駅

花巻駅は東北本線と釜石線が乗り入れる花巻市の代表駅です。ここから東北本線に乗り換え、2駅南にある北上線の始発駅・北上駅を目指しました。

北上線の旅

北上駅

花巻駅で9時20分発の東北本線 普通・北上行きに乗った私は12分後の9時32分に終点の北上駅に到着しました。

北上駅は東北新幹線も停車する岩手県北上市の代表駅で、他に東北本線と北上線が乗り入れています。ここからは北上線に乗って東北地方を引き続き西へと横断します。

北上線の列車は切り欠き状になっている0番線ホームから発着します。写真を一通り撮り終えた私は、0番線ホームにすでに停車していた2両編成の快速・横手行き(快速と言っても3駅しか飛ばさないが)に乗り込み、発車のときを待ちました。

そして午前10時3分、列車は横手へと向かい出発しました。

北上線の旅

北上駅を出発した列車は間もなく左へと大きくカーブし進路を西へと変えました。

北上線は岩手県内陸部の都市・北上市の北上駅と、横手焼きそばや冬のかまくらで有名な秋田県南部の内陸の都市・横手市の横手駅を結ぶ全長61.1kmの路線です。北上線は紅葉がきれいな路線として知られ、秋には多くの観光客で賑わうそうです。

列車はしばらく北上市内の市街地を走っていましたが、やがて列車は東北地方の真ん中を縦に貫く奥羽山脈の山越えに入り、車窓には徐々に山が近づいてきました。

和賀仙人駅を出てしばらくすると、車窓の右側に北上線屈指の紅葉スポットである錦秋湖が見えてきました。錦秋湖は近くにある湯田ダムによってできたダム湖で、秋になると背後の山々の紅葉が湖の水面に映る幻想的な光景が見られるそうです。

錦秋湖は東西に延びた細長い湖であり、見るチャンスはいくらでもあると思っていましたが、実際の列車の中からはなかなかその姿を拝むことはできませんでした。それでも一カ所だけよく見えたのが錦秋湖の玄関口「ゆだ錦秋湖駅」を出てしばらく後にある橋梁「第二和賀川橋梁」を渡るときでした。錦秋湖の西端にあたりますが、右側には錦秋湖の眺めと背後の山々がきれいに見えるポイントでした(下の写真の5枚目)。

北上線最大の見どころを終えた列車は引き続き西へと進み、やがて山を越え秋田県へと入りました。そして北上駅を発車してから1時間12分後の午前11時15分、列車は終点の横手駅に到着しました。

横手駅

横手駅は奥羽本線(福島~山形~秋田~青森)と北上線が乗り入れる主要駅の一つです。ここから奥羽本線に乗り北へ3駅隣の大曲駅へと向かいました。

奥羽本線で大曲駅へ

大曲駅

横手駅11時48分発の普通・秋田行きの列車に乗った私は、12時06分に3駅隣の大曲駅で下車しました。

大曲駅は秋田県中部の内陸の都市・大仙市の代表駅で、秋田新幹線、奥羽本線、田沢湖線が乗り入れる主要駅の一つです。

大曲と言えば花火が有名な町で、日本三大花火大会の一つである全国花火競技大会が毎年夏の終わりに行われています。開催日である8月の最終土曜日(2018年は8月25日、2019年は8月31日開催予定)には多くの観光客が押し寄せるそうですが、ちょうど大会1週間前のこの日はそこまで多くの人はいませんでした。

さて時刻は12時をまわったので、ここで食事をとることにしました。向かったのは大曲駅の西口から徒歩3分のところにある麺酒菜「おり座」という店です。シックなたたずまいの店に入ると、中にはテーブル席とカウンター席がありました。カウンター席に座った私は秋田名産の比内地鶏を使ったラーメン「比内地鶏の中華そば」(税込750円)を注文しました。

そして中華そばを美味しく頂いた私は大曲駅へと戻りました。

 


3日目の途中ですが、今回の記事はここまでとなります。

ここからは北へと進路を変えて、東北屈指のローカル私鉄、秋田内陸縦貫鉄道と弘南鉄道・大鰐線を乗り継いで青森県第二の都市・弘前駅へと向かいますが、続きは次回の記事(Part6)に書きたいと思います。

 

続きは「2018年 東北縦断の旅・Part6ー秋田内陸縦貫鉄道とレトロ漂う大鰐線の旅」へ

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